会社設立・商業登記

商業登記とは

商業登記は、株式会社などの法人について、設立(誕生)から清算(消滅)にいたるまで一定の事項を法務局で登記することにより、法人の内容を社会一般の人に公示することで、法人を巡る取引の安全を実現する制度です。 

司法書士は、これら商業登記手続きについて、書類の作成や申請代理業務を行います。

登記の種類にはいくつかあり、法人の内容に生じた変化の原因に応じて申請する登記の種類が決められています。 主な例としては、次のとおりです。

登記の原因 申請する登記の種類
新たに会社を作りたい 会社設立登記
代表取締役や取締役、監査役   などの会社役員が変わった 役員変更登記
会社の名前や目的を変更したい 商号変更・目的変更登記
事業拡大のために資本を増加したい  増資の登記
社の本店を移転したい 本店移転登記
会社経営をやめたい 解散・清算結了の登記

平成18年5月から新しい「会社法」が施行され、有限会社が株式会社に移行したり、最低資本金制度がなくなるなどの新制度が始まりました。 これに伴い商業登記の手続も大きく変わり、複雑・多様化しており、我々司法書士が商業登記の分野で果たす役割もますます大きくなってきています。

なお、商業登記手続きについては、不動産登記手続きと異なり、登記事項に変更が生じた場合、原則2週間以内に本店所在地を管轄する法務局へ、登記申請する事が法で義務付けられております。 長期間放置してしまうと、裁判所より過料(行政罰の一種)が課せられる事がありますので、ご注意下さい。

会社設立の手続き

会社法施行(H18.5.1〜)で、

会社設立はそれまでと比べて格段に容易になりました。 

例えば、株式会社を設立するには、それまでは資本金を最低1000万円用意しなければなりませんでしたが、その最低資本金制度が撤廃され 、1円の資本金でも設立が可能となりました。また、発起人(株主)1名、取締役1名の会社も設立することができます。

この機会に、「いつかは自分で会社をつくる!」という夢を実現してみませんか?

会社を設立しようという時は、登記のこと以外にも何かと忙しい時期だと思います。

事業計画のこと、税金のこと、事業所、事業資金、従業員のこと、、、 手間のかかる会社設立登記に関することは、当事務所にお任せになって、会社経営のスタートをスムーズに進めてください! 

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株式会社設立の手続き

株式会社は株式を発行することにより、資金を調達します。 出資者の責任は、有限責任(出資額を限度として責任を負う)です。 株式会社を大きく分類すると、非公開会社と公開会社があります。

非公開会社とは、発行する全部の株式について譲渡制限の定めを設けている会社のことで、譲渡制限会社といわれています。比較的小規模の会社を想定しており、取締役の人数は1名とすることができます。

公開会社とは、発行する全部または1部の株式に譲渡制限が与えられていない会社のことで、比較的大規模な会社を想定しており、取締役の人数も3名以上、取締役会を設置する義務もあります。

株式会社の設立フロー

  • 01
    基本事項の検討(商号・目的・本店の所在地・会社機関など)
  • 02
    会社代表印などの印鑑の準備
  • 03
    定款作成
  • 04
    定款認証(公証役場)
  • 05
    出資払込・給付
  • 06
    設立時取締役による調査
  • 07
    本店所在場所の決定
  • 08
    登記申請書類の作成
  • 09
    登記申請(法務局)
  • 10
    登記完了
  • 11
    設立後の諸手続き

株式会社設立に必要なもの

定款

定款は会社設立に必要となるだけでなく、会社の目的や組織、業務などの根本的な決まりを定めるため、設立後もその運営や方針をめぐって会社を拘束します。 株式会社ではさらに公証人の認証を得る必要があります。 記載内容は会社の形態によって異なりますが、記載がないと無効になる「絶対的記載事項」、 記載しないと効力が生じないという「相対的記載事項」、記載するかどうか自由な「任意的記載事項」があります。

参考

株式会社の絶対的記載事項

目的 (会社の事業内容)

商号 (○○株式会社)

本店の所在地 (市町村単位で記載)

設立に際して出資される財産の価格、又はその最低額

発起人の氏名(名称)と住所

発行可能な株式の総数

印鑑

① 会社実印(代表者印)

会社の代表者は、契約書への押印など会社としての意思表示をする権限を有しますが、それを具体化するために「会社代表者印」を作成する必要があります。 規格は一辺の長さが10mmを超え、30mmの正方形におさまるもので、 設立登記の申請時にも必要になる最も重要なものなので、設立後も管理にはくれぐれも気をつけましょう。

➁ 銀行印

会社名義の銀行口座を開設する際の届出印です。 代表者印を兼用してもかまいませんが、実際上、経理担当者に預ける必要がある場合も多く、銀行取引用として代表者印とは別に用意しておいた方が便利です。

➂. 角印

請求書や領収書など、日常の使用頻度の高い業務用として使うものです。これも必ずしも必要ではありませんが、紛失・悪用等のトラブル防止にもなります。

④ 会社ゴム印

領収書や封筒など、反復継続的に会社名や代表者名、所在地、電話番号を記載するときにあると便利なので、注文するときに一緒にたのんでおくと日常業務に役立ちます。

その他登記申請に必要な書類

・ 発起人及び代表取締役の印鑑証明書1通(発行後3カ月以内)

・ 発起人及び代表取締役の個人実印

・ 出資金(資本金)の振込が記帳された通帳コピー(出資金を現物出資される場合は別途必要書類ございます)

株式会社以外の法人の設立

NPO法人設立

どういう条件がそろえばNPO法人ができるのか?

特定非営利活動を行うことを主たる目的とすること

営利を目的としないこと

社員の資格の得喪に関して、不当な条件をつけないこと

役員のうち、報酬を受ける者の数が、役員総数の3分の1以下であること

宗教活動や政治活動を主たる目的とするものでないこと

特定の公職者(候補者を含む)又は政党を推薦、支持、反対することを目的としないこと

暴力団又は暴力団の構成員等の統括の下にある団体でないこと

10人以上の社員を有するものであること

以上いろいろあります。

最低10人の社員(賛同者)を集めること。役員は理事が3人以上、監事が1人以上必要です。

設立手続きには、申請に必要な11種類の書類が必要です。

用意した書類を都道府県あるいは内閣府に提出します。

医療法人設立

病院、医師若しくは歯科医師が常時勤務する診療所又は介護老人保健施設を開設しようとする社団又は財団は、医療法人とすることができます。

医療法人を設立するに当たっては、知事の認可を受けなければなりません。知事は認可又は不認可の処分をするにあたっては、医療審議会の意見を聞かなければならないとされています。

1.社団

通常複数の者が出資し設立する法人で、出資者は社員となり、出資額に応じて出資持分を有します。 出資持分は、退社、解散の際、持分に応じて払戻しをうけることになります。なお、出資しない者を社員としても差し支えありません。

2.財団

社団に対し、個人又は法人が寄付した「財産」に基づき設立される法人で、社団とは異なり、持分を与えず、解散した際は、理事会で処分方法を決め、知事の許可を受けて処分することになります。

合名会社

合名会社は、人的会社と呼ばれ、出資者である各社員は、業務執行権を有して、運営に強い影響力を行使できる反面、対外的な責任についても社員全員が無限に責任を負います。

したがって万一のときには会社債権者に対して、社員の個人財産を含めて直接に連帯責任を負うことになり、個人的な信用を売り物にした小規模の会社向きといえます。

合資会社

合資会社は、無限責任社員と有限責任社員を混在させた会社で、合名会社の個人的な信用を生かしつつ、有限責任の社員を入れることにより、出資を受け入れやすくするという折束型の企業形態です。

資本の定めはなく出資者は各自1円ずつであっても設立が可能ですが、最低でも無限責任社員と有限責任社員が1人ずつ存在することが要件となります。

その他の商業登記

その他の商業登記(役員変更、商号・目的変更、本店移転等)

役員変更の手続き

商業登記記録の登記事項に変更が発生した場合には、2週間以内に変更登記をしなければならず、それを怠ると、100万円以下の過料に処せられます。 最近、この変更登記を怠ったために多額の過料に処せられるケースが増えています。

会社の役員(取締役、代表取締役、監査役等)も同様に、変更が発生した場合は、登記を申請する必要があります。

任期満了後も同じ役員が再任となる場合にも変更登記が必要です。

忘れがちな手続ですが、会社の代表権者等を公示する大切な手続きですので、お忘れのないよう注意下さいませ。

当事務所では役員任期の確認、必要書類の用意、法務局での申請手続きまで、幅広くサポートしますので、お気軽にご相談ください。

役員変更登記が必要な場合

役員変更の登記が必要になるのは主に次のような場合です。

具体的な手続き

※ 定款の定めにより選任期間が異なる場合があります。

※(代表)取締役就任の場合、取締役の印鑑証明書が必要になる場合があります。

※ 氏名変更・住所変更は変更を証する書面は不要です。

取締役、監査役の任期

株式会社の取締役の任期は、原則として選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで、 監査役の任期は選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までと定められています。  (会社法332条)

但し、株式の譲渡制限規定を設けている会社(非公開会社)は、定款変更によって、 取締役及び監査役の任期を選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで伸長することができます。

役員の任期を約10年にすると、役員変更にかかる費用は軽減されますが、任期中の役員に辞めてもらう方法が、辞任か解任しかない事、任期満了後も登記申請をせず、 最後に登記申請をしてから12年が経過すると法務局にて職権で解散登記がされてしまうなどのデメリットもあります。慎重な検討が必要となります。

機関設計

株式譲渡制限あり 株式譲渡制限なし
区分 非公開会社 公開会社
取締役の人数 1人以上
※取締役会設置時は3人以上
3人以上
取締役会 任意 必置
監査役 任意
※取締役会設置時で
会計参与非設置時は必置
必置
会計参与 任意 任意

株式会社は、株主総会と1名以上の取締役を設置しなければなりません。(会社法326条)

非公開会社については、その他の機関(取締役会、監査役、監査役会、会計参与、会計監査人、委員会等)は、定款の定めによって任意に設置できるとされています。

非公開会社は、実体にあった役員構成とするために取締役を1名とすることができます。

その場合、会社法施行前から存在する株式会社については「取締役会設置会社」「監査役設置会社」である旨が職権で登記されていますので、株主総会の決議によってその定めを廃止し、 株式の譲渡制限に関する規定の承認機関を取締役会から株主総会(もしくは代表取締役)へ変更する登記が必要になります。

商号、目的変更の手続き

会社の商号を現在の商号から変更する場合  には、商号変更の登記、会社の事業目的を  追加・変更・削除する場合には、目的変更の 登記が必要となります。

いずれも定款の必要的記載事項ですので、 株式会社の場合、株主総会にて定款変更の特別決議(原則議決権の過半数を有する株主が出席し、 出席した当該株主の議決権の3分の2以上の賛成をもって行う決議)を要します。

商号変更

会社法施行(H18.5.1〜)により、類似商号使用禁止の制限はなくなりましたが、現在も、同一本店所在地且つ同一商号の場合(事業目的に関係なく)には、当該商号は使用できません。

また、商号には漢字、平仮名、片仮名の他に、ローマ字や、アラビア数字等の一部の符号(&、等)も用いる事も可能になりました。

目的変更

新しい事業をするにあたり、許認可(官公庁へ許可、認可、届出等)がなければ、開始することができないものもあります。 そして、許認可の中には建設業許可のように資本金が一定額以上なければ許可が得られないものや、許可を得るために提出する資料が多数あるものもあります。

許認可を取得する前に目的を追加する登記を行う事は可能ですが、許認可を取得した後でないとその事業は開始出来ませんので、許認可が必要かどうかも充分に調査する必要があります。

体的な手続

有名な会社と同一・類似の商号で同じ商売をしてしまったり、不正な目的で他の会社と勘違いさせるような商号で商売をしていると、商号の差止請求を受けたり、損害賠償請求を受けたり、あるいは信用回復措置請求をうける場合があります。(会社法第8条、不正競争防止法第2条1項1号・3条・4条・7条)したがって、商号を変更する場合のみならず、新しい事業をはじめられる場合にも、後日トラブルが起こらないよう事前に商号の調査をおこなうことをお勧めします。

本店移転の手続き

会社の所在地を変更した場合、本店移転の登記を申請しなければいけません。本店移転の登記は同一法務局の管轄区域内で変更する場合と異なる法務局の管轄区域へ移転する場合では手続の内容が変わります。

同一管轄内での同じ様な事業目的で同じ様な名前の会社が存在する場合、類似商号使用の禁止といった問題がありましたが、現在は、会社法施行により同一本店且つ同一商号でない限り、登記法上は問題ありません。

しかし、不正競争防止法上問題となりかねない可能性がありますので、異なる法務局の管轄区域内へ会社の所在地を変更する際にはしっかりと事前の調査をすべきでしょう。

本店を移転するには、株主総会や取締役会を開催し、本店の所在地を決議する必要があります。また、定款変更が必要な場合もあります。

具体的な決議の内容は、会社の機関構成や定款の規定により異なります。

※ 取締役会非設置の場合は通常取締役の過半数の一致による決定となります。

※ 以下の場合は、定款変更となるため、株主総会の特別決議が必要となります。    
・ 最小行政区画(東京23区は○○区、それ以外は市町村)が変わる場合    
・ 定款で、本店所在地を本店の所在地番まで定めている場合

※ 旧本店所在地の法務局宛、新本店所在地の法務局宛、それぞれの申請書を各1通
 作成し、旧本店所在地の法務局に全て提出します。

有限会社から株式会社への移行

1 .特例有限会社として会社法施行以降も存続する(みなし株式会社)

特例有限会社とは、「従来の有限会社と同様の扱いを受ける『有限会社』という名称の株式会社」のことです。

会社法では有限会社と株式会社は、株式会社に一本化されますが、現に存在する有限会社が当然に消える事はありません。「従来の有限会社と変わらないようにするための特則」を設け、従来の有限会社と同じ組織形態を持ち、旧有限会社法とほぼ同じ規定が適用される特別な株式会社として、特例有限会社を設けたのです。

この方式を選択した場合、原則として特に変更登記手続きは必要ありません( ※ 最低限必要な登記記録上の変更については、会社法施行時に法務局 が職権で移行登記を済ませてあります。)

登記記録上は、「有限会社」と記載されたままですが、現在の会社法に合わせて「株式会社」とみなす、という事です。

2 . 商号変更により、株式会社へ移行する

会社法では営業継続中の有限会社も実態は株式会社とみなされるので、会社の商号を「○○有限会社」から「○○株式会社」に変更するだけで、株式会社に変更登記できます。(※最低資本金制度が撤廃されておりますので、資本増加の必要はありません。)

事業規模が拡大して株式会社化を目指していた会社や、本来株式会社として起業したかったが、最低資本金や役員数等の諸般の事情で有限会社で事業をしていた会社にとっては、会社法施行は有限会社にとって株式会社化する、大きな機会と言えます。

但し、株式会社は役員の任期がある(最長約10年まで伸長する事はできます)ため定期的に役員変更登記が必要、事業年度末毎に計算書類の公告が必要といった負担も発生します。

資本金の変更

1 . 資本金の増加(増資)

資本金は、会社の規模や信用をはかるためのひとつの基準になるものです。

資本金は、会社の規模や信用をはかるためのひとつの基準になるものです。

いずれも会社法に規定された手続きを踏み、登記申請をして登記記録に反映させることが必要となります。

募集株式の発行は、株主に対して持株比率に応じて株式を割当てる株主割当とそれ以外の第三者割当てに分けられます。会社の役員や縁故者、取引先等が株式を引き受ける場合も第三者割当の方法による増資になります。

会社が新株を発行するときは、割当ての方法、公開会社か非公開会社かによって、取締役会または株主総会で募集事項を決定することになります。

2 . 資本金の減少(減資)

会社の事業規模の調整や税金対策などの理由で、資本金を減少することが会社経営に有効となる場合があります。

資本金を減少したときは、その登記を申請する必要があります。資本金の減少は株主総会の決議が必要になります。

また、資本金は会社債権者に対する担保として会社に留保すべき財産額を示すものですので、これを減少するためには会社債権者に対する公告・催告等の厳格な手続きが要求されます。

資本金減少の効力が発生するのは、株主総会で決議した日から少なくとも1ヶ月後となりますので、目的に合わせたスケジュールを作ることが必要です。

解散・清算

1 . 解散

会社の事業を終結し、会社の存在を消滅させるためには、解散して、清算手続きにより既存の法律関係を処理する必要があります。

最も多い解散事由は、「株主総会の決議による解散」ですが、株主総会の決議によって解散が承認されると、会社の役員は当然にその資格を失い、以後は清算人が会社を代表して清算手続きを行っていくことになります。

この際に、解散及び清算人選任の登記申請が必要になります。

上記の他、以下の解散事由があります。

定款で定めた存続期間の満了

定款で定めた解散の事由の発生

合併による会社の消滅

破産手続開始の決定

解散を命ずる裁判

休眠会社(最後に登記をしてから12年以上経過している会社)のみなし解散

2 . 清算手続き

清算手続きにおいて、会社名義の全ての財産と負債を処理したあと、株主総会で決算報告等の承認を行い、決議が成立した時点で会社は法人格を失って消滅することになります。

清算結了の際にも、その登記申請が必要になります。

企業法務

会社は、その企業活動において様々な法律上の問題に直面していきます。また、会社を取り巻く法律は、度重なる大企業の不祥事や急激な経済情勢の変化に合わせるように相次いで改正がなされており、コンプライアンス(法令遵守)の重要性が高くなっています。

このような状況において、会社に法務部などの部署をもたない中小企業にとって、これまで商業登記を通じ企業法務にたずさわってきた司法書士は、身近な法務アドバイザーとなっています。

司法書士は、会社法の専門家として法律の改正への対応だけにとどまらず、株主や債権者などへの対応、法的な文書の整備、ストックオプションの発行、株式公開の支援、企業再編、取引上のトラブルや事業承継などの問題についてもアドバイスをすることができます。

また、簡易裁判所の訴訟代理権が付与されたことにともない、会社の代理人として140万円以下の事件の訴訟対応をすることも可能となっています

このように、これからますます複雑になってくる企業活動において、司法書士は企業法務のコンサルタントとしての役割が期待されています。